街は見た目はいつも通りなんだが空気というか感覚が荒んでいる。
道行くのは武装した集団。俺を見れば警戒はするが近寄っては来ない。
しかし街に来たのはいいが、
「どこに行けばいいんだ?」
 アテは全然無い。
とりあえずぐるーっと回ってみるか。
今のところ時間はある。
そう、今のところ、は。

 人が居ない、訳ではないが探している人物ではない。
どうしたものかと思案する。
「そうだ。」
 確か遺跡とかに興味があったはず。
となれば、ここから一番近いのは<ナイトライト寺院>。
 人気の無い寺院は派手な戦闘でもあったのか荒れていた。
そこに一人ぽつんと座り空を見上げているのは、
「おい!」
 俺の声に振り返るのは、
「探してたんだぞ!」
 俺を見てまた視線は空へと向かう。
「何無視してるんだよ、ラビット!」
「うるさいわね。静かにしなさいよ。」
「ここで何があったんだよ?」
「……さぁね。鬼が暴れたんじゃない?」
 どこか拗ねている口調。
まさにそんな感じの荒れ具合。
ベンチは真っ二つだし街灯は折れ曲がり、花壇や石畳は荒れている。
「じゃ、私は行くわ。」
 立ち上がり服に付いた埃を払って立ち去ろうとするが、
「話があるんだ。」
「ゴメンね。もう話している時間は無いの。」
「ど、どういう意味だ?」
「これから最後の仕上げが始まるのよ。」
「じゃ、この出来事はお前達が……。」
 返事は無い。真っ直ぐに俺を見ている視線が肯定しているように感じる。
俺は剣に手をかける。
「待ちなさい。時間が無いって言ったでしょ。キミも早く戻るといいわ。」
「詳しい事を聞いてから戻るさ。」
「だから時間が無いって言ってるでしょ。」
 呆れたように大きく息を付くラビット。
「私は敵ではないわ。これは本当。で、キミの敵は向こうにいるの。」
 指差す先は王城。
「私もそこ向かうわ。キミも急ぎなさい。じゃないと……。」
 言葉を区切り、
「鬼が怒るわよ?」
 笑ってはいるが顔は強張っている。
ラビットはそのまま俺の横を通り過ぎて行った。
「鬼って……。」
 ここに来て事態が判らなくなった。
ラビットは敵では無いと言った。
で、俺の敵は、
「城に居る。」
 ここからだと王城も小さく見える。
そして、その周囲が赤く染まっているように見えた。
太陽は俺の頭上にある。
「火事っ!?」

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